協働事例

NPOと企業や行政などの協働事例を掲載しています

中津市・大新田海岸の松林再生プロジェクト

Photo

現状と地域課題

 中津市の大新田海岸は、1990年代まで子どもたちの春の恒例行事として「浜遠足」が行われるなど、市民の生活や憩いの場所でした。しかしその後ライフスタイルの変化等により人々の足は遠のき、にぎわいは失われ、一帯の環境保全への意識も低下してしまいました。雑木・雑草が茂り、加えて20数年前に設置された木製の防護柵がボロボロになり、視界を悪くするとともに景観を損なうようになり、不法投棄の場となることや犯罪の発生が心配されました。
 松林の整備と維持管理に当たっては、土地の所有者が思いの外多いことが分かりました。また、防風保安林ということもあり細かな規制があることも知りました。プロジェクトを進める上では承諾や許認可など制度的なハードルを乗り越えることに苦労しました。
 課題の解決のためには、何よりもまず私たちが暮らすふる里の自然を好きになる事が重要です。自分の好きなもの、好きな事を大切にしない人はいませんよね。そこから地域の未来を一人ひとりが考え、身近な問題として向き合うことにつながるはずです。そして、豊かな自然環境を残していくための継続的な環境保全活動が本当の意味ではじまると考えます。これを促すには、行政の支援や呼びかけ等の協力体制が必要です。

地域課題解決の取組・成果

 松林再生プロジェクトは、森林ボランティアに依頼し松林の雑木伐採、伐採木の処理作業をするところから始まりました。作業は、雑木伐採、運搬、伐採木処理、防護柵の撤去、下草刈り、堆肥作り等を行い、令和2年12月現在までに6,500㎡の整備が進んでいます。
 地域の環境保全活動には人々の理解とつながりが大切です。まずは知ってもらうこと、参加してもらうこと、そして自分自身で体験して考えることが求められます。大新田海岸では、2000年から年3回のビーチクリーン(海岸清掃)を行っています。地域特有の自然を保全し、自然と人々との暮らしをつなぎ直すための活動の一環としてスタートしました。同時に「海ごみ問題」を考える漂流物調査や中津干潟に生息するカブトガニ等の生き物の自然観察会を継続して行っています。活動を通じて地域の方々も少しずつ地域の環境について興味をもっていただけるようになりました。
 地元の小中学校で環境学習のお手伝いも行っています。令和2年度は、小楠小学校の4年生が干潟観察会をきっかけとして、浜辺をきれいにしたいとビーチクリーンと松葉かきをしてくれました。地元の県立工科短期大学の新入生向けにも海辺の環境や活動についての紹介を毎年行っており、海岸清掃などの活動を行っています。また、中津干潟の保全を推進してきたことにより、近郊からの視察や、調査に訪れた県外の水産大学校の学生が松林整備のお手伝いを申し出てくれる等、これまで環境保全と啓発活動を地道に積み重ねてきたことで、少しずつですがプロジェクトへの賛同・参加者が増えてきています。
 地域の方へ伝えたいこととしては、プロジェクトが目指す大新田の自然の姿や活動内容を伝えるための「松林再生リーフレット」、松林に連なる地域の歴史や暮らしについてまとめた冊子「大新田の浜と松林の物語」を制作しました。さらに、地域でこれから松林再生に取り組む人々のために再生プロジェクトの調査・活動の過程を記録した「松林管理マニュアル」を作成し、配布しています。また、松葉かきを通じてつくった堆肥は、中学校で利用された他、一般の方向けにも無償で配布しています。
 松林再生プロジェクトのスローガンである学校恒例行事としての「浜遠足復活」はまだ実現していません。けれども平成28年と29年の秋には、市内の親子向けにイベントとしての浜遠足を開催し、これまで活動に参加してくれた大学生や実行委員も一緒になって楽しみました。
Photo
Photo

協働による効果

 水環境・生物多様性の保全や地域貢献等の活動を積極的に行っている地元企業「TOTOサニテクノ」を中心としたTOTOグループの社員の皆様が松林再生プロジェクトにも多大なご協力をいただいています。以前からビーチクリーンへご参加いただいていたこともあったのですが、それに加えてお手伝いいただいております。
 雑木伐採後の運搬は機械が入れられないので人海戦術による大変な重労働でしたが、その大部分を担っていただきました。また松葉かき、草よせ作業も一般参加ボランティアの中心となって継続的な活動を実施してくださっています。
 こうしたご協力のおかげで、大新田松林の一部が再生・整備されています。浜辺の景観が良くなったことで、不法投棄が少なくなったり、利用者のマナー向上につながりました。また、散歩やランニングなどのスポーツ、休憩、ピクニックなど憩いの場として市民が再び大新田海岸を訪れるようになりました。また、プロジェクト活動の看板により環境保全活動を知ってもらい、みんなが楽しく利用できるよう促しています。
 市民の利用が広がったことは、すばらしいことですが、活動への賛同・ご協力についてはまだ道半ばです。ただ少しずつではありますが、時間をかけて地域と密着した活動を継続してきたことにより、良い循環ができつつあると感じています。
(取材日R2.12)

協働相手の情報

Photo
住所
大分県中津市大字是則700
協働相手名
TOTOサニテクノ株式会社
コメント
多様な生態系を持つ大新田海岸の環境保全と合わせ、この松林の美しい原風景を復活させ、後世に残していくために「水辺に遊ぶ会」さんの想いに寄り添って、一緒に活動を継続していきたいと思っています。
サイトを見る

団体情報

Photo
団体名
特定非営利活動法人 水辺に遊ぶ会
活動場所
大分県
所在地
大分県 中津市 中央町2丁目8番35号
情報開示レベル
おんぽ活用レベル
団体情報はこちら

関連ページ

アンケート

閲覧履歴